伊藤康英 / 交響詩《時の逝く》
Ito, Yasuhide / As Time is passing on Symphonic Poem for Band


  1. 第1部 ラメント (Lamento)
  2. 第2部 行進曲 (Marcia)
  3. 第3部 怒りの日 (Dies Irae)
  4. 第4部 時の逝く (As Time is passing on)
作曲者: 伊藤康英
作曲年: 2000年
演奏時間: 15分
編成: 2or3Fl. Picc. 2Ob. 3Bas. EbCl. 3BbCl. AltoCl. BassCl. Sop.Sax. 2Alt.Sax. Ten.Sax. Bar.Sax. 4Hrn. 3Cornette. 3Trp. 2Trb. BassTrb. Euph. Tub. Cb. Timp. Perc. Mix-chor(sung by players)
初演: 2000年5月25日 佐川聖二 指揮 グラール・ウィンド・オーケストラ


出版社:
委嘱者: グラール・ウィンド・オーケストラ
解説: グラ-ル・ウィンド・オーケストラの10周年記念曲として作曲。しかし出来上がった作品は、むしろレクイエムに近い。そういえば、ブリテンは、日本の紀元 2600年のために『鎮魂交響曲』を作曲し、そのタイトルが日本政府の顰蹙を買ったことがあった。だから私のこの作品も、記念曲にふさわしくないぞ、といわれるかもしれない。
が、それにはこんな経緯がある。
「指揮の佐川先生が泣けるようなメロディを」なんてことが、委嘱の条件に書いてあったりしたのだ(ちなみにこれを書いたのは、バンドの中で打楽器を担当しているMさんで、ぼくの高校の後輩にあたる)で、それならば、ワーグナーふうのたっぷりとした息の長い音楽を書いてみようと思った。あれやこれやとメロディを捜し求めていると、ふと、かねて作曲した『時の逝く』という未発表の無伴奏合唱曲のことが気にかかりだした。そこで、このモティーフをずっと念頭におきつつ作曲を進めていった。ところが今度はこの合唱曲そのものを引用してみたくなってきたのだった。
『時の逝く』という詩は、林望氏の手になるもので『鎮魂十二頌』というレクイエムの冒頭の詩。数年前に受け取ってこの合唱曲を書いたのみで、ずっとそのままになっていた。レクイエムとは鎮魂もしくは魂の救いを描いたもので、この詩自体は、決して悲しみにくれているばかりではなく、その口調はむしろ明るい。暖かい。
結局、この混声四部合唱曲をほぼそのままの形で引用することとした。
その詩をここに引いておく。

朝に 頬染めた 光は
たちまち 昏れて 夕べに
時の逝く そのはやさ
そのしのびやかさに
驚いている
わたしがいる

生きてあること
思えば すべては
一度っきりのことだったよ

春べに 萌えそめた 緑は
たちまち 夏の 木立に
時の逝く そのはやさ
そのうつりかわりに
たじろいでいる
わたしがいる

生きてきたこと
思えば すべては
一度っきりのことだったよ

この作品を書いたことで、自分の中の二つの仕事―吹奏楽と声楽―につながりが見えてきたような気がして大変に嬉しい。
曲は単一楽章で4部からなり、それぞれ「ラメント」「行進曲」「怒りの日(Dies Irae)」「時の逝く」と題されている15分強の作品。
本日の初演がうまくいきますように。(初演プログラム/伊藤康英)

林望の詩による、アマチュア吹奏楽団グラール・ウィンド・オーケストラによる創立10周年記念委嘱作品。未発表の無伴奏混声合唱曲「時の逝く」が引用されている。コンクール用に再構成された交響的断章《時の逝く》もあり。

大会ごとの集計

年度ごとの推移

吹奏楽コンクールでの演奏記録