中橋愛生 / とっかあた


Nakahashi, Yoshio /


吹奏楽コンクールでの演奏記録

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作品情報

作曲者: 中橋愛生
作曲年: 2005年
演奏時間: 0分
編成:
初演: 0000年00月00日 指揮


出版社:
委嘱者:
解説: 外囿祥一郎氏の委嘱。ピアノ伴奏によるアンコール・ピースとして演奏されることを前提に作曲。委嘱時の条件は、「1、日本の音階を用い」「2、誰もが知っている旋律が出てきて」「3、超絶技巧で」「4、盛り上がって派手に終わるもの」というもの。曲中に出てくる主な旋律は「さくら」、「茶摘み」、「うさぎ」という《春・夏・秋》を題材にした三曲。この中には《冬》が含まれておらず、ここから「冬、刈った(とう、かった)」をもじって『とっかあた』というタイトルとした。片仮名ではなく平仮名にしているのは、「なんちゃって日本」のニュアンスを残したかったため。『トッカータ』とは、指馴らしの目的で書かれた即興的な鍵盤楽器のための音楽というのが本義なので、本来はアンコール・ピースに付けるようなタイトルではない。欧題は「TOCcatA」であり、「TOC - cat A」と分解できる。「TOC = Table of Contents」はMDなどにもある内容一覧情報のこと。伝統的曲名のなかに「とある小猫(Cat A)」が踊っているのである。ユーフォニアムという丸みをおびた迅速な猫の、様々なテクニックの見本市のような曲に聴こえれば、と思う。外囿氏のユーフォニアムの素晴らしさは今更言うまでもない。「どこがすごいか」と問われれば「全て」と言うしかないだろう。よく言われるのが、その美しさの極致と言える音色、そして、恐ろしく広い音域とそのコントロールテクニック。その他では、超人的なテクニックは余人の及ぶところではないし、軽快な曲想における鮮やかさは見事としか言いようがない。だが、外囿氏の本当に凄いところは、それら全てを自在に操り、曲に応じて適材適所に使い分け、瞬間的に表情をガラリと変えつつも全体として見事に纏め上げる、という「音楽性」そのものだろう。短い中にも、それらを可能な限り同居させようと努めてみたが、どうだっただろうか。演奏時間は2分半。

2005年9月20日に完成し、10月16日にヤマハアトリエ東京で行われた「外囿祥一郎/ユーフォニアム・マスタークラス」において初演(ピアノ:藤原亜美)。その後、同年11月4日に初演と同じ演奏者によって録音が行われており、2006年6月に佼成出版社よりCDが発売。楽譜は2006年8月1日から佼成出版社よりオンデマンド方式で発売。2007年には浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルのソロ・コンサートでも演奏されている。

吹奏楽伴奏版も作成されており、こちらの完成は2005年11月30日。初演は同年12月23日に滋賀県立芸術劇場びわこホールにて行われた龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部の定期演奏会にて。ユーフォニアム独奏は外囿祥一郎氏、指揮は若林義人氏。

更に、金管セクションおよび打楽器3人による伴奏版も作成されており、こちらの完成は2006年1月22日。初演は同年3月26日に高知市文化プラザ・大ホール(かるぽーと)にて行われた《The Brass Factory》の旗揚げ公演「ブラスの祭典」にて。指揮は若林義人氏。メンバーは、トランペットがMOST TRUMPET 「THE MOST」の野儀 光(フリーランス)、森岡 正典(仙台フィルハーモニー)、中山 隆崇(東京都交響楽団)、杉本 正毅(フリーランス)、田中敏雄(読売日本交響楽団)、高橋 敦(東京都交響楽団首席)、ホルンが「MISTCOR」の森 博文(東京フィルハーモニー首席) 、高橋臣宣(フリーランス)、今井 仁志(NHK交響楽団)、斉藤 善彦(フリーランス)、トロンボーンが「4boneline」の村田陽一(ジャズトロンボーン)、池上 亘(NHK交響楽団)、古賀 慎治(東京都交響楽団)、篠崎 卓美(読売日本交響楽団)、バリ・テューバが「The Tuba Band」の外囿 祥一郎(独奏/航空自衛隊航空中央音楽隊)、山岡 潤(ジャズユーフォニアム)、阿部安誌雄(陸上自衛隊中央音楽隊)、荻野 晋(東京フィルハーモニー)、打楽器が「The Sticks」の堀尾伸二(航空自衛隊航空中央音楽隊)、西川 圭子(東京都交響楽団)、和田 光代(フリーランス)、の各氏という超豪華なもの。

2007年3月14日には管弦楽伴奏版も完成。2007年5月8日に愛知県芸術劇場コンサートホールで行われた「セントラル愛知交響楽団特別演奏会 吹奏楽⇔オーケストラ」において、外囿祥一郎氏独奏・小松長生指揮により初演されている。

とにかく、私のようなペーペーの若造から大作曲家に至るまで幅広い層に作品を数多く委嘱し、それら全てに熱心に取り組み、分け隔てなく接して下さる外囿氏には畏敬の念を禁じ得ない。世界に誇る超一流の奏者のためのアンコール・ピースを書かせて頂けたことは、私の生涯の誇りの一つである。余談ながら、この曲はアンコール・ピースとして書かれている以上、プログラムにタイトルが載らないことが多い。作曲者ですら再演されている状況が把握できない、という変わった曲。それだけ多くの回数、演奏して下さっている外囿氏には、ひたすら感謝。

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