中橋愛生 / 玻璃ぷりずむ ~吹奏楽のためのテクナル・ミニマリズム


Nakahashi, Yoshio / Hari - Prism Technal Minimalism for Symphonic Band


吹奏楽コンクールでの演奏記録

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作品情報

作曲者: 中橋愛生
作曲年: 2004年
演奏時間: 8分
編成:
初演: 2004年12月23日 若林義人 指揮 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部
滋賀県立芸術劇場びわこホール
龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部第31回定期演奏会
出版社: ブレーン
委嘱者: 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部
解説: 龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部の委嘱作品。

以前、「響宴」の練習のために京都にある龍谷大学へ伺った。龍谷大学のすぐ近くには伏見稲荷大社があるのだが、練習の日の朝に時間があったので、ちょっと登ってみた。そこで見たのは、かの有名な千本鳥居。延々と連なる紅い鳥居(時折、石造りのものも)の隙間から差し込む陽光、聞こえてくる水音・鳥の鳴き声・遠くの電車の音・・・・・ 不思議な「日本的ミニマリズム」をそこに感じ、以前どこかで似たような感じを覚えたことを思い出す。山村暮鳥の詩を読んだときのことではなかったろうか。日本的なミニマリズムから感じられる、輝く色彩感。そういえば暮鳥は自身を「ぷりずみすと」と称していたっけ・・・・・その後、龍谷大学の御厚意で、新曲を書かせて頂けることになった。この曲に前述の体験が織り込まれることとなったのは、必然だろう。日本の旋法を用い、ミニマルミュージックの要素を盛り込んでみた。様々な意味での「時間のずれ」が感じられるだろうか?曲は連続して演奏される三つの部分より成っており、テンポが段階的に速くなる。この変化の仕方は特殊な方法を採っており、結果として「メトロノームにないテンポ指定」が書かれている(これは楽譜を見たら一目瞭然なのだが)。accelやritなしでテンポを速くしていくことはできないか、とかねてから考えていたのだけど、その実践(実験?)をやってみた次第。スコアの冒頭には山村暮鳥の詩より「雪景」(黒鳥集・所収)、「風景(純銀もざいく)」(聖三稜玻璃・所収)、「玻璃もざいく」(拾遺詩篇・所収)の三篇が掲げられている。曲の部位と対応していなくもないのだが、別に詩の内容を表現しようとしたものではなく、あくまでも「参考」程度の意。

やはり「作曲にあたっての新・編成組織方法の提案」に準拠した方法でパート割がなされており、「Pic(1)、Fl(3)、Ob(2)、 Bsn(2)、Es Cl(1)、Cl(8)、B-Cl(1)、B♭ C-bassCl(1)、S-Sax(1)、A-Sax(2)、T-Sax(1)、Bar-Sax(1)、Trp(6)、F-Hrn(6)、 Trb(8)、Euph(2)、Tuba(2)、Str-B(1)、Perc(6)、Hrp(1)」《()内は必要最低限人数》という大編成。人数は多ければ多いほど望ましい、という大変な曲。完成は2004年11月17日。初演は2004年12月23日に滋賀県立芸術劇場びわこホールで行われた龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部第31回定期演奏会において、若林義人指揮の同吹奏楽部による。演奏時間は8分 20秒。ところで、サブタイトルは佐々木敦氏の名著の題に似ているけれど、特に関連はない。どちらかというと「木偶(てく)なるミニマリズム」との掛け言葉。後日、某氏から「ヴァレーズのハイパープリズムか」と言われたけれど、それはもっと関係ない。目指したのは「誤った京都観」と「ださカッコイイ」。

私の曲としては珍しい「ノリノリ系」の曲なのだけれども、これには多分に龍谷大学のみんなの印象の影響。どこまでも明るく、楽しく、それでいて礼儀正しく、熱心に練習に取り込む姿。彼らと過ごしたとても幸せな時間と真摯な姿勢に感謝と敬意を表し、龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部とその音楽監督・若林義人氏に捧げたい。

第10回「響宴」において、初演と同じく若林義人指揮・龍谷大学学友会学術文化局吹奏楽部にて再演、ライヴ録音がブレーンより販売されている。なお、CDの英語表記では「Technal」が「Technical」と誤って記載されている。楽譜はブレーンよりレンタル。

(作曲者より許可を得て転載)

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